あくまちゃんはバズりたい!!

ウチのあくまちゃんはバズりたいようです。応援していきましょう。だるユキ(描いてる人)のラクガキ置き場のブログです。たまに雑談するかも。

あくまちゃんエピソードゼロ(自作短編小説)

悪魔の仕事は、実に簡単な仕事だ。

悪魔はそう思った。

 

彼、悪魔は願い主の魂…命をもらう代わりに、

その願い主の願いを叶えて満足させるのが

その悪魔の仕事だった。

 

願い主を騙してでも、

願い主に願いを叶えさせたと思わせれば

その契約は成立する。

 

簡単な仕事さ。

 

昔、

「難病である娘の病を治して欲しい」

と自らの命を差し出してきた父親がいた。

 

悪魔はその自らの持つ不思議な力で、

父親の前で娘を元気にして見せた。

父親は満足して、自らの命を悪魔に差し出した。

 

その後すぐに娘が亡くなったとも知らずに。

 

いくら悪魔でも

できることとできないことがある。

 

そして命を代償に叶えたい願いなんて、

だいたいが無理難題なことだ。

 

だから悪魔は人を騙す。

騙して、その魂を奪うのだ。

 

今、目の前のいる

愚かな男もそうだ。

 

今回も実に簡単な仕事だ。

男は願った「一生、遊んで暮らせる金が欲しい。」

男はこうも言った。

「地下に娘を閉じ込めてある、その娘の魂がお前の報酬だ。」

 

馬鹿だなぁ。

 

願い主の魂じゃないと

願いは叶えられないのに。

 

悪魔は思わず

そう言って笑いそうになるのを

堪えながら言う。

「願いは一生遊んで暮らせる金、でいいな?」

男は言った。

「ああ、そうだ。もう貧乏なんてまっぴら御免さ。

ちょっと前まではウチも金持ちだったんだがな…。

ある商人に騙されて、妻にも逃げられたよ。」

 

契約成立だ。

 

その瞬間、

その『男の一生』は終わった。

だから遊ぶ金なんて要らない、必要ない。

そうだろう?

 

 

 さて、娘の顔でも見に行ってみるか。

悪魔はそう思った。

 

もしかしたらまた『いいお客』になるかもしれない。

 

地下に足を運ぶと、

娘は鍵付きの部屋に閉じ込められていた。

逃げないようにしていたのだろう。

 

部屋を開けて中に入ると、

娘はこちらを見てこう言った。

「あなたがパパの言っていた悪魔?本当に実在してたのね。」

 

どうやら

ある程度はあの男から、

事情を知らされているらしい。

 

にしても肝が据わった娘だ。

悲鳴の一つでもあげるかと思ったが。

 

「と言うことは私、今からあなたに魂を奪われるのかしら。」

 

悪魔は考える、どう騙してやろうかと。

どう魂を騙しとろうかと考える。

「ああ、そうだ。最後にやり残したことでもあるのか?」

とりあえず、魂を頂く前提で

娘の望みを聞くことにした。

 

「そうね、可愛いって、いいねって褒められたいわ。昔みたいに。」

「そんな願いでいいのか?」

「私の趣味は絵を描くことなんだけど、貧乏になってからは誰も褒めてくれないの。」

娘の足元には、娘が描いたと思われる絵が散乱としていた。

 

「悪魔さんのことも描いてあげましょうか?いつもは可愛いネコとかを描くんだけど…。」

「俺の事を?描くだと?」

「ええ、悪魔なんて滅多にお目にかかれないし、死ぬ前に描いてみたいわ。」

「それは面白い。描いてみろ。未来永劫、語り継がれるような恐ろしい悪魔をな。」

こうして

悪魔と娘の奇妙な生活がはじまったのだった。

 

 

 「これはいいな気に入ったぞ。」

 

絵が完成したその日のことだ。

自分が描かれた絵を満足そうに悪魔は見ていた。

 

「端っこに描かれている、この可愛らしい悪魔の絵はなんだ?」

その悪魔の絵の端には、可愛らしい悪魔がもう一人描かれていた。

「あなたに妹がいたらそんな感じかなって。可愛いでしょ?」

 

悪魔は笑った。

 

「俺に妹か!人間は面白い事を考えつくものだ。」

「私、もともと可愛いものを描くのが専門というか…好きだから。」

「しかしこの可愛い悪魔は、どことなくお前に似ているな。」

「そうね、ちょっと似せたかもしれないわ。」

気がつくと、娘の目には涙が流れていた。

 

「…だって私、自由になりたいの。でももう…。」

 

娘が悪魔の絵を描いている間、

娘は一歩も外には出ていない。

悪魔は知っていた、

娘はもう足が動かないのだ。

 

それどころか、最近は

ペンを持つ手すら

満足に力が入っていないようだった。

 

病気なのか栄養不足なのかはわからない。

あの男、娘の父親が娘を地下に閉じ込めていたのは、

もともとそういう理由だったのかもしれない。

 

「悪魔って自由そうでいいわね。」

「まあな、自由でいいぞ。悪魔は。」

魂を集める仕事はあるが…。

 

正直な話。

魂を集めているのは

単なる暇つぶしと、

その魂を魔力に変換させ、

自分の魔力を高めるため

だったりする。

 

別にやらなくてもいい仕事なのだ。

 

「悪魔さん、私のお願い、聞いてくれる?」

 

「…契約の話か。」

 

「生まれ変わったら、

この絵のような可愛い『あくまちゃん』に生まれ変わりたい。

そしてみんなから、いいねって可愛いねって言われたいの。」

 

「願いは可愛い『あくまちゃん』になりたい。でいいな?」

娘はゆっくりと頷いた。

 

契約成立だ。

 

「絵を描いてくれた礼だ。

今まで集めた魂の魔力を、

全部使ってでも

その可愛い『あくまちゃん』に転生させてやるよ。」

 

人を悪魔に転生させる術は

その悪魔にはないが

その絵を器にして『あくまちゃん』に転生することは

可能だ。

 

 

 こうして、

数十年の月日が流れ

『あくまちゃん』は誕生した。

 

そして今日も元気に、

自分は世界一で可愛いんだと

言わんばかりの

決めポーズで自撮りしている写真を

SNSに投稿している。

 

まるで承認欲求の塊だ。

 

そんな

あくまちゃんを

まるで、我が子を見守るかのように…。

 

悪魔は今日も

あくまちゃんの自撮りツイートに

いいねとリツイートを押すのであった。

 

 

以上、あくまちゃんの背景エピソードでした。

いつか漫画化したいです。(画力不足のため、こんな駄文で形にしてみました)

 

pixiv小説で書いたのをコピペしてきたものです。

 

今後もなんか短編小説を思いついたら

書くかもしれないので

カテゴリも作っておきました。

 

暇つぶしにでも、読んでくれると嬉しいです。

ついでに感想とかも、

気軽にコメントしてくれると嬉しいです。